Akigawa Valley Geo Excavation

ジオ資産の発掘・ジオ通信

秋川流域ジオの会は発足から6年を経過し、2025年には7年目の活動がスタートしました。その間会員の数も増え、あきる野市周辺とそれ以外の会員が半々近くなりました。また、テーマ別の専門グループも多岐に渡り、その活動全体を広報することが難しくなりました。幸い会では、当初から季刊の広報誌を発行・配布し、会員相互の理解と検討を進めてきました。先般の役員会で、広報紙「秋川流域ジオの会通信」を一般の方々にも公開する、ことが決まりました。会のジオ資産発掘活動を適宜公開します。ご意見・討論をお楽しみ下さい。

2024秋川流域ジオの会通信(季刊)

ジオの会通信は、秋川流域ジオの会発足当初から概ね3ヶ月毎に年4回発行され、
HP開設以前から会員に配布され、会の活動内容全般を会員間で共有してきました。
これをHP上で広く一般の方々にも公開し、ジオへの関心を高めてもらう一助とします。

<<ジオの会通信はPDFファイルです。読むためにはPDFリーダーをダウンロードしインストール
して下さい。 その上で
通信VOL.nnの下線部分をクリックすれば各号が表示されます。
戻るときは、PDFファイルを✘で終了しHPに戻ります。>>

タイトル写真(2023/2024三宅島巡検の写真
(橘丸)

4.2024.12.25 秋川流域ジオの会 通信 VOL.22  

3.2024.09.28 秋川流域ジオの会 通信 VOL.21 

2.  2024.06.22 秋川流域ジオの会 通信 VOL.20  

1.2024.03.23 秋川流域ジオの会 通信 VOL.19 

2023秋川流域ジオの会通信

三宅島雄山の爆裂火口(2023.11)

4.2023.12.23 秋川流域ジオの会 通信 VOL.18  

3.2023.09.23 秋川流域ジオの会 通信 VOL.17 

2.  2023.06.24 秋川流域ジオの会 通信 VOL.16  

1.2023.03.25 秋川流域ジオの会 通信 VOL.15 

2022秋川流域ジオの会通信

三宅島 七島展望台(2023.10)

4.2022.12.24 秋川流域ジオの会 通信 VOL.14  

3.2022.09.24 秋川流域ジオの会 通信 VOL.13 

2.  2022.06.25 秋川流域ジオの会 通信 VOL.12  

1.2022.03.26 秋川流域ジオの会 通信 VOL.11 

2022年度 テーマ別調査研究グループ

1. 付加帯研究会 11名
2. 化石研究会 8名
3. 檜原村村域ジオサイトの発掘
4. 上総層群研究グループ 

1.付加帯研究会 2022の調査報告

  付加帯研究会の活動発表

  付加帯研究会では、本報告の他に2022.09.09に成蹊大学の宮下先生をお招きして講演会を開きました。その後10月24日、12月08日に先生の資料を基に学習会を行いました。ただ先生の「未発表の最新研究情報」が含まれるため、今回は公開していません。


2.化石研究会 2022の活動報告

  「化石研究会の活動報告

左写真は羽生渓谷で見つかった貝化石

2021秋川流域ジオの会通信

三宅島の朝

4.2021.12.18 秋川流域ジオの会 通信 VOL.10  

3.2021.09.18 秋川流域ジオの会 通信 VOL.09 

2.  2021.06.19 秋川流域ジオの会 通信 VOL.08  

1.2021.03.19 秋川流域ジオの会 通信 VOL.07 

2021年度 テーマ別調査研究グループ 

2021年度は引き続き2020年のテーマを継続検討していくことになりました。
1. 秋川・平井川流域の秩父帯における海洋プレート層序 8名
2. 「五日市-川上構造線」の実態を追う  名
3. 化石から探る中新世五日市海の古環境  5名
4. 留原層の頃の五日市盆地の姿を探る   名
5. 檜原村村域ジオサイト発掘  名

2020秋川流域ジオの会通信

三宅島溶岩の上で花を咲かせる草

4.2020.12.19 秋川流域ジオの会 通信 VOL.06  

3.2020.09.19 秋川流域ジオの会 通信 VOL.05 

2.  2020.06.23 秋川流域ジオの会 通信 VOL.04  

1.2020.03.17 秋川流域ジオの会 通信 VOL.03 

2020年度 テーマ別調査研究グループ 

今期は、1〜4までは前期のテーマを引き続き検討します。会員は希望で各グループに属することが出来ます。希望者は事務局へ 、
1. 秋川・平井川流域の秩父帯における海洋プレート層序 7名
2. 「五日市-川上構造線」の実態を追う  9名
3. 化石から探る中新世五日市海の古環境  3名
4. 留原層の頃の五日市盆地の姿を探る   7名
5. 檜原村村域ジオサイト発掘  14名

1.秋川・平井川流域の秩父帯における海洋プレート層序  

  2020年度は2つのテーマに取り組みました。日の出町三ツ沢の熊野神社付近に東流する二つの河川、滝本川(平井川上流部)と焼岩沢、及び焼岩沢の支流、岩垂沢の地質調査。岩垂沢には石灰岩や塩基性火山岩などのホットスポット火山島起源の異地性岩体が分布しています。二つの河川と岩垂沢を調べることによって付加体層序の中にメランジュとして取り込まれた異地性岩体の様相を把握したいと考えたのです。もう一つは日の出町細尾ミタゴ沢の石灰岩採石遺構。石灰岩産業は日の出町の近世、近代史に関わりを持ち、太平洋セメント以前に遡る貴重な遺構です。 

三ツ沢のチャート褶曲メランジュ

チャートの中の断層、幅80cmの破砕帯

岩垂沢石灰岩の四放サンゴの化石

日の出町細尾ミタゴ沢露岩の矢穴跡

ミタゴ沢石灰岩のフズリナ化石

2. 「五日市-川上構造線」の実態を追う

 今期は、戸倉城山から西方面に檜原街道にそった、追分・荷田子・青木平周辺、檜原村元郷から払沢の滝までの調査を実施しました。概略次の通りでした。 
1)追分から荷田子への途中に新矢柄橋があるが、゙古い矢柄橋を西に向うと、矢柄沢が秋川に合流するあたりで左側に大きな露頭があり、゙露頭の左右は砂岩と泥岩という明らかな違いが見られ、 五日市―川上構造線が通っているのだろうと推定された。
2)秋川の北側の道を西に進み橋沢林道を北に入ると、入口付近は砂泥互層、200mほど遡ると秩父帯と思われる砂岩に突き当たる。
3)青木平で秋川は大きく湾曲しており、その東岸で構造線露頭と思われる場所を確認
4)檜原村役場付近、南北秋川の合流地点から北に200m程遡った地点に幅6mにも及ぶ断層ガウジを確認
5)払沢の滝は今まで断層崖を流れ落ちると説明してきたが、滝の沢筋は砂泥互層の四万十帯の特徴が顕著で、秩父帯の岩層はやや北側にある。また層行からも滝面は断層面ではないことが明確になった。滝は四万十帯の柔らかい地層を削りながら後退していき、今の砂岩層を流れ下るようになったと推定される。

矢柄橋付近の露頭


檜原本宿付近の断層露頭


払沢の滝


断層露頭を探す

3. 化石から探る中新世五日市海の古環境

2020年度、伊藤和弘氏採集の 79 点、遠藤求氏採集の 72 点、奥山聡氏採集の 119 点の、いずれも五日市町層群産出化石について、種の同定、計測、写真 撮影をしてデータベースに組み入れました。
伊藤氏のものは日の出町落合だけから産出するクモヒトデなど を含み、遠藤氏と奥山氏のものは台風 19 号後に小和田橋下の地層から多産した縦肋のある二枚貝や小型の 巻貝を多数含む点で重要な資料です。 
  

 データベース中の「集計」をもとに、層準ごとの偏在について以下のことが分かってきました。

1)植物は小和田橋下流(小庄泥岩部層下部)に多く、特にメタセコイアが多い。
2)ウニは羽生橋付近と落合橋下流(いずれも舘谷泥岩部層)に多い。
3)甲殻類のツメは、秋川橋下流(小庄泥岩部層上部)に多く小和田橋下流(小庄泥岩部層下部)からは出ない。
4)クモヒトデは落合橋下流(舘谷泥岩部層)からしか産出しない。
5)イネルミススミゾメガイは三内川下流(舘谷層上部)に多い。
6)トクナガソデガイは小和田橋下流(小庄泥岩部層下部)と三内川下流(舘谷層上部)に多いが前者は総じてサイズが小さく、同種として良いか検討が必要である。
7)イシカゲガイ属、Acrosterigma属、マルフミガイ属、メイセンタマガイ、としたものは小和田橋下流(小庄泥岩部層下部)からしか産出しないか、または同地点に偏在する。 

4. 留原層の頃の五日市盆地の姿を探る

 2019年度調査(下記4.を参照)に引き続き、今期は台風19号によってできた新しい露頭2か所について、調査を行い、柱状図の作成・サンプリングを行いました。
花粉分析と珪藻分析のデータ解析は次年度に行います。 

また、盆地の周縁部の段丘、小机の段丘、および、天王沢周辺に分布する留原層の露頭の観察を進めました。 
それらの結果から、推定される段丘の形成史について、現在、次のように考えています。 その詳細や、裏付けは、ボーリングデータの解析や花粉・珪藻分析のデータの整理を進める中で、明らかにしていきたいと考えています。

1) 留原層の堆積は、およそ12万年前の温暖期が終了するに伴い、始まったと考えられる。その根拠は、
(イ)基盤の五日市町層群を削り込んで深い谷を形成し、その谷地形を埋める形で留原層が堆積している。五日市周辺のような河川の上流部では、温暖期は侵食・寒冷期は堆積の場になると考えられており、これに整合的である。
(ロ)留原層の最下部に御嶽第一軽石(On-Pm1)~御嶽伊那(On-In)の一連のテフラが見え、その堆積年代はおよそ10万年前であり、これらのテフラが観察されるのは、三内川沿いの段丘崖と天王沢中流部の段丘崖に限られる。
(ハ)隣接する相模川流域でも、同様な地層が観察されるので、留原層を堆積した環境は、関東山地の東側で普遍的にあったと考えられる。
2)留原層の堆積環境は、その地層の観察から、盆地内の流域に局所的に形成された渓流や沼沢地である可能性が高い。
3)留原層が形成された要因は、本流が作る河原の河床の上昇に伴って、支流の流れがせき止められ、周辺部や支流沿いに厚い泥層が発達したと推定される。
4)従来区分されてきた段丘の1面に相当する地形は、それ以下の段丘面に比べて、急傾斜で扇状地的性格を持っているので、側方からの土砂の押出しによる沖積錐である可能性が高い。ただし、その下に段丘が埋没している可能性は否定できない。
5)一番高い位置にある小机段丘面は、ATをのせていることから、3万年前より古い段丘と考えられる。この段丘を作った川は、秋川支流である三内川の可能性が高い。秋川流域では最も古い段丘面と考えられる。※小机段丘のとっくり穴から採集された植物片の14C年代測定の結果は、残念ながら江戸時代となり、堆積時ではなく、以降の時代の混入物と確認された。
6)秋川本流が作る段丘は、現在の第2段丘が主である可能性が高い。それより低い段丘は、秋川本流の下刻作用で作られた。第2段丘には薄いロームしかなく、ATをのせていないので、その形成時期は最終氷期もしくはそれ以降と考えられる。
7)秋川が作った第2段丘は、北岸で礫層が厚く、南岸で礫層が薄い。このことは、第2段丘形成時の本流筋は、現在の秋川の北側を流れていた可能性が高い。現在の武蔵五日市駅の北側~西側に見られる厚い礫層がそれを示唆している。
 


5. 檜原村村域ジオサイト発掘

 檜原村は、島嶼部を除き東京都で唯一の村ですが、深い山や谷に囲まれた神秘を感じさせる領域です。今年度からこの神秘に迫るプロジェクトが始まりました。今期のテーマは、
a) 数馬砥石といわれ古くから使われてきた砥石はどこから産出されたか。それはどんな石?
b)最奥の村、茗荷平が廃村になったのはいつ? 現在どうなっているか。そこにあるという雨乞いの滝とは? 
調査の結果は
1)三頭山近くの標高890m~1100m地点で砂岩泥岩互層に貫入している灰白色の流紋岩の露頭を発見。これが砥石として使われてきたか。従来三頭山は深成岩の石英閃緑岩の山という認識であったが、流紋岩の発見により新たな三頭山の解説が必要となる。石英閃緑岩と流紋岩の地質的年代考察や砥石としての利用等歴史文化的調査も進めたい。

2)茗荷平部落は、5~6年前に茗荷平最後の住民が離村した当時そのままに廃屋があることを確認。積極的保存活動はなされていないようであるが山での暮らしの残存が生々しい。
天照皇大神宮の社や馬の飼育に使った水槽、旅人の宿となった屋敷跡、村民のお墓など、山での暮らしの文化的要素もこれからの研究課題でる。
3)雨乞いの滝は、奥深く沢沿いの道が崩壊して既になく、道作りから始めている。

宿屋屋敷跡

氏神さま

お墓

廃屋残存

2019秋川流域ジオの会通信

朝 御蔵島を見る

2.  2019.12.17 秋川流域ジオの会 通信 VOL.02  

1.2019.08.20 秋川流域ジオの会 通信 VOL.01 

2019年度テーマ別調査研究グループ

会員の中でグループを作り次のジオサイトの発掘に努めます。
1. 養沢川上流ビリ窪沢に見られる海洋プレート層序
2. 「五日市-川上構造線」の実態を追う  
3. 化石から探る中新世五日市海の古環境  
4. 留原層の頃の五日市盆地の姿を探る
5.産業遺産「神谷マンガン鉱山」の時代を復元する

1. 養沢川上流ビリ窪沢に見られる海洋プレート層序
  2019年3月5日筑波山地域ジオパーク視察研修で、産業技術総合研修所の酒井氏より「川井層に見られる枕状溶岩」の話を伺い調査を開始。期待に違わず、枕状溶岩、チャート、塩基性火成岩堆積物と石灰岩の混在岩、珪質泥岩、砂岩が分布することがわかり海洋プレート層序を構成する「役者」がほとんど揃っていることが分かりました。

枕状溶岩の滝

見事な層状チャートを流れるソーメン滝

石灰岩礫を取り込む玄武岩

ビリ窪沢の地質断面図

2.「五日市-川上構造線」の実態を追う   今熊山の麓の金剛の滝付近を源流とする逆沢は、秋川に平行して流れていますがその流路は反対方向で東から西に流れています。「五日市-川上構造線」は戸倉周辺の地質・地形に大きな影響を与えていると考えられます。今年度は戸倉城山から金剛の滝付近までを調査。 

戸倉城山を東から見て、左肩から南には四万十帯の千枚岩があります。また刈寄堰堤下には見事な断層ガウジが見られ左は黒色頁岩の四万十帯、右は砂岩やチャートを含む秩父帯の特徴が観察されます。断層ガウジにはつるつるの鏡肌や条線も見られます。 

金剛の滝

逆沢のガウジ

戸倉城山

3. 化石から探る中新世五日市海の古環境   五日市盆地周辺に分布する新第三系「五日市町層群」から産出する化石について、種、採集者、採集日、採集地、産出した地層、計測値及び写真を記録したデータベースを作成することを目指しています。秋川流域ジオ情報室に収蔵されている化石を調査し直し、記録することからはじめました。2020年2月時点で、総数222点のうち195点の調査・記録を終え、うち88点は写真撮影しました。 (収集化石画像の一部を示す)

Callianassa sp  スナモグリ  19016

Portlandia Tokunagai トクナガソデガイ   19015

4. 留原層の頃の五日市盆地の姿を探る 

 「五日市むかしむかし」が発行された時代、留原層は、はるか昔(数十万年前)に存在した五日市湖にたまった堆積物という概念がありました。本当にそうなのかを検証するため、2009 年度から、あきる野市の自然環境調査・地質部会では、五日市盆地をくまなく歩いて、留原層の分布や年代を明らかにしてきました。 その結果は、約 10 万年前以降に堆積した湿地や渓流性の堆積物ではないかというものでした。この結果をふまえ、ジオの会では、五日市盆地に発達する段丘の形成について、どの川がいつ、どういう 順序で今の地形を作ったのかを明らかにしようと考えました。
 そこで今年度は、まいまい坂周辺、日の出町於奈淵、飯能、青梅千ヶ瀬、友田などで丘陵の形成やその下層部地質の観察などを進めました。またサンプルの採取や分析を行いました。
小机の段丘の留原層からは、御嶽第1軽石(On-Pm1)などのテフラが見つかり、留原層は約10万年前から堆積したことが分かりました。

天王沢の留原層

V字谷

とっくり穴

最上部ロームから姶良丹沢テフラ(AT)

5.産業遺産「神谷マンガン鉱山」の時代を復元する

  養沢神谷マンガン鉱山は、昭和20年代に7〜8年間採掘されその後閉山された鉱山跡です。奥多摩にはこの他に、鋸山、白丸、川苔谷の吉田、日原の廉川(きよかわ)などのマンガン鉱山があったようです。これらとの関連も調査し、ジオサイトになり得るかを検討しました。
結果としては、鉱山口への道はなく、鉱道内も崩落の恐れ、鉱石もほぼゼロであることがわかりました。これらのことからジオサイトとしての利用は無理との結論になりました。

鉱山坑道入口

鉱山で採取した菱マンガン鉱石